CD
ftarricl-666
限定300部
2021年9月12日発売
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作曲:渋谷由香
井上郷子:ピアノ (1-8)
篠田昌伸:ピアノ (6, 7)
このアルバムは、2007年から2018年に作曲したピアノ曲4曲を収録。演奏はピアニスト・井上郷子。2018年のソロリサイタルでのライブ音源を今回新たにマスタリングした。
《時の箱》以外の3曲は、井上さんのために作曲した作品。《コスメティック・ダンス》を作曲した2007年頃、私は井上さんの演奏が好きでよく演奏会へ足を運んでいた。曲が完成してまもなくのとある日も井上さんの演奏を聴きに行った。終演後、作曲家の木下正道さんが私を井上さんに紹介してくれた。私は完成したばかりの楽譜をお渡しした。この出来事がきっかけで、私はその後《海にとける雲、空にうかぶ島 2 》、《円窓からの眺め 2》を書き、井上さんはその度に国内外で初演と再演を重ねてくださった。
収録曲4曲の作曲方法はそれぞれ、いやかなり異なる。例えば《コスメティック・ダンス》ではサイコロを使い、《海にとける雲、空にうかぶ島 2》はアンサンブル曲のピアノパートを応用してソロ曲に書き換えた。《時の箱》では反転させた拍節構造を用い、《円窓からの眺め 2》ではペダルと休符を意識的に使用した。だが、異なる作曲方法の根底に一貫して変わらない興味がある。それは「音が消えゆく瞬間」への興味だ。この瞬間を捉えるために、あえて違う方法で様々な角度からアプローチしていくことが、ピアノ曲を作曲する時の私の約束事になっている。音が生まれる瞬間よりも音が消えゆく瞬間を聴く。音が消えゆく瞬間に立ち現れる一瞬がある。言葉通りはかなく消えゆくときもあれば、一瞬のうちにとてつもなく長い時間を感じることもある。時間の流れさえをも感じないこともある。各作品はそれらの瞬間による蓄積が作品固有の時間となって、ある種非常に閉じた世界になっている。4つの閉じた時間がこの1枚のCD に収められ並べられることで、閉じた世界と世界のあいだからひろがっていく景色があったなら嬉しい。(渋谷由香)
Ftarri が現代音楽の作曲作品に特化したサブレーベル Ftarri Classical をスタート。その第一弾としてリリースされるのが、渋谷由香 / 井上郷子『Works for Piano』。渋谷由香は1981年京都生まれの作曲家。東京藝術大学卒業、同大学院博士後期過程修了、博士号取得。武生国際音楽祭 (福井県越前)、Quatuor Bozzini Presents: SALON TOKYO [2018] (カナダ、モントリオール)、Thin Edge New Music Collective Presents: Ongaku [2019] (カナダ、トロント)、Music from Japan [2020] (米国、ニューヨーク) をはじめ国内外のフェスティヴァルやイヴェントに参加。これらを通して、彼女の作品は日本および海外の演奏家に取り上げられてきた。井上郷子は神戸出身、日本を代表する現代音楽ピアニスト。作曲家近藤譲主宰のアンサンブル「ムジカ・プラクティカ・アンサンブル」のメンバーを経て、1991年よりソロ活動を開始。日本はもとより世界各地でフェスティヴァルに出演し、ソロ・リサイタルをおこなっている。
2018年3月4日に井上郷子は毎年恒例の東京でのピアノ・リサイタルを開催し、渋谷由香のピアノ曲を4曲演奏した。「コスメティック・ダンス」(2007)、「海にとける雲、空にうかぶ島 2」(2015)、「時の箱」(2016)、「円窓からの眺め 2」(2018) がその4曲で、本アルバムには、そのリサイタルでのライヴ演奏を収録。「時の箱」以外の3曲は、渋谷が井上のために書いた作品である。2台のピアノのための作品である「時の箱」では、篠田昌伸 (ピアノ) が客演している。
「コスメティック・ダンス」が4パート、「時の箱」が2パートにそれぞれ分かれているため、CDは4曲収録だが、8トラックで構成される。渋谷由香自身によるライナーノート (日本語と英語) 付き。