CD
hitorri-972
限定200部
2022年11月27日発売
価格 1,500 円 + 税
作曲:大蔵雅彦
大蔵雅彦:アップライト・ピアノ、サイン波
私は竹下勇馬氏の撮った鳥の写真のファンで、自分の音源のアートワークに使わせてもらいたいというアイデアは以前から持っていました。
本作の録音を終えた後にこの写真を竹下氏の Instagram で見つけた時、私はこれは雄同士の縄張り争い、雄の雌に対する求愛行動、子育て中の親子、その3つのうちどれかだろうと推測しましたが、竹下氏に尋ねると、これはおそらく巣立って間もないカワセミの幼鳥の兄弟同士の餌の取り合いか縄張り争いiだろうということでした。
どの予想とも違うがどれとも関係がある。本作のアートワークにふさわしいと確信しました。
私たちは個人として、集団として、似ているから求め争いつながりあおうとするのか、あるいは違っているから恐れ愛し補いあうのか。本作がそのような事柄、おそらくは答えのない事柄についての音楽でもあると竹下氏の写真が、その中に永遠に閉じ込められた2羽のカワセミが教えてくれました。
Material Unity は電子音+物理楽器1種類の組み合わせによる作曲シリーズであり、本作はその第2番となります。Active Recovering Music では発音の基本単位である多重チューニングサイン波束をそれぞれが固有の意味を持つ独立した音高からなる集合体/群体と定義しています。同様にピアノもまた固有の論理を内包した音高の並列的集合体と捉えることができるでしょう。これはそのふたつの邂逅の記録です。
ふたつの群れ、ふたつのシステムが接触する時のざわめき、恐れ、歓びはこの音楽から聴こえてくるでしょうか。(大藏雅彦 / Active Recovering Music)
Active Recovering Music (ARM) は東京在住のリード奏者、大蔵雅彦のソロ・プロジェクト。大蔵がARMを始めたのは2008年。当時はソロ・プロジェクトではなく、複数人数からなるスライド・ホイッスル・アンサンブルだった。2013年に、8人編成ARMが東京水道橋の Ftarri に出演。そのライヴ演奏3曲を収録したCDが、同年『Active Recovering Music』のタイトルで Meenna からリリースされている。
ARMはその後姿を変え、現在は大蔵のソロ・プロジェクトとなっている。本CDには、2022年5月9日に Ftarri でおこなったライヴ演奏、48分の全1曲を収録。柔らかい数本のサイン波が重なり合い、緩やかに脈動するドローンがコンピュータから流れるなか、大蔵は時折 Ftarri にあるアップライト・ピアノの複数の鍵盤を同時に弾き、その音が数秒間続く。これが終始繰り返される。非常にシンプルな構成なのだが、聴く者を安らぎと陶酔の世界へと誘うような、不思議に魅惑的なパワーを秘めた快作。