Ftarri / Hitorri

小川道子

Solo May / 2020

CD
hitorri-976
限定150部
2021年4月11日発売
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  1. omote (17:50)
  2. ura (28:41)
  3. takai (22:52)

    mp3 excerpt: track 1
    mp3 excerpt: track 2
    mp3 excerpt: track 3

小川道子:ハモンド・オルガン (Hammond T200 Leslie)


私たちのアパートはベルリン北西部の5階建の建物の地上階に位置していて、風が抜けないL字型の形状をしている。玄関から伸びる比較的広い廊下には70年代の古いハモンドオルガンが居座っている。これは夫が市内のどこかの墓石屋に埃まみれで長い間置き去りにされていたものを格安で譲ってもらったもので、修理が必要な状態であったが、私はむしろガリガリとノイズを鳴らしながらなんとか本来の機能を保っているその巨大な電子楽器になぜか不思議な愛着を感じていた。2020年5月世界的パンデミックによるロックダウンの最中、唯一の日課は2歳になる娘を夫と交代で散歩に連れ出すことだった。1日のうち自分の時間は最大2時間。この音楽はそんな同じことが繰り返される先の見えない奇妙な日々の中で一人で制作した。omote は内蔵されているレスリースピーカーからの音を録音し、ura と takai は Line 接続で録音したものである。(小川道子)


小川道子は東京出身のクラリネット奏者。桐朋学園大学音楽学部卒業及び同大学研究科修了、ドイツ国立フライブルグ音楽大学 (修士号取得)、お茶の水女子大学で作曲家の近藤譲に師事、カリフォルニア大学サンディエゴ校音楽学部現代音楽演奏専攻博士課程修了と、日本、ドイツ、米国の大学、大学院でクラリネットの演奏と音楽学を学ぶ。Tokyo Experimental Festival (Tokyo, Japan, 2013)、Supersense Festival of Ecstatic Music (Melbourne, Australia, 2015)、the Monday Evening Concert series (Los Angeles, 2016), BIFEM (Bendigo, Australia, 2016, 2017, 2019)、Brisbane International Film Festival (Brisbane, Australia, 2018)、Maerzmusik (Berlin, Germany, 2018, 2019) ほか、国内外のフェスティヴァルに数多く出演。2019年には、Ftarri Festival にも Klaus Lang (harmonium)、Johnny Chang (violin)、Samuel Dunscombe (bass clarinet) とともに出演した。現在はドイツ、ベルリンに住み、現代音楽と実験 / 即興音楽のシーンで活動を続けている。

本CDは小川道子のソロ・アルバムだが、クラリネットではなく、なんとハモンド・オルガンを演奏している。長らく使われることなくホコリにまみれていたのを、格安で譲ってもらった1970年代のハモンド・オルガンだ。時はコロナ禍でロックダウン中の2020年5月のベルリン。この異常な日々のなかで、ひとり制作した3曲 (18分、28分、23分)を収録。ハモンド・オルガン独特の柔らかで温かみと深みのある音色が複数重なり、音程の変化と音の微妙な揺れを伴いながら絶え間なく続いていく。


Last updated: March 31, 2021

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